あなたは「ポケモンGOの真髄」をまだ味わっていない
2017年7月6日は「ポケモンGO」が米国でリリースされて1周年に当たる。日本でリリースされてから1年間遊びつつけたライターの伊藤朝輝氏が、辞めてしまった人向けにおすすめしたい遊び方を語る。
「まだやっているの?」と聞かれるけれど……
筆者がポケモンGOをスタートしたのは2016年7月22日。日本でサービスが始まった日だ。しかしウィロー博士に初めて会った時のスクリーンショットを確認すると17時3分と夕方。それまで何をしていたのかというと、毎年夏に映画館で公開されるポケモン映画を朝から見に行っていたのだ。もちろん今年も見に行く。
そう、筆者は大のポケモン好き。ゲームボーイ時代にリリースされた「ポケットモンスター赤・緑」以来、すべてのシリーズを遊んでいる。最新作「サン・ムーン」も絶賛プレー中だ。バトルも大好きで自宅でWi-Fi対戦するだけでなく、リアルで開催されるバトルイベントに参加することもある。
ポケモンはあの世界観とバトルが面白いと思っている。その点でポケモンGOの1周年前に行われた大型アップデートは待ちに待ったものだった。詳しくは後述したい。
最近、ポケモンGOをやっているという話をすると「まだやっているの?」という反応が多い。確かに辞めた人に対する気持ちも分からなくはない。なんと言っても単調だから。
携帯ゲーム機版のポケモン(以下「本家」)はゲームの舞台となる地方で、ライバルや悪の組織と戦いつつ、ジムを攻略したり試練を達成したりして、最後にその地方の新チャンピオンになる(「殿堂入り」する)といった基本ストーリーがある。ストーリーが終わったらゲームは終わりというユーザーの話をよく聞く。そういう人は多いのだろう。
ポケモンGOをもっと楽しむには?
だが、殿堂入り後は、ポケモンのバトルゲームとしての面白さが広がっている。CPU戦も高度になってくるが、もっと面白いのは対人バトルだ。CPU戦よりもずっと駆け引きが複雑で奥が深く、いくらやっても飽きることがない。
バトルの面白さは単に勝つことだけでなく、自分が大事に育てたポケモンをうまく使って勝負する点にある。これはゲームの中のトレーナーと同じ。つまりバトルを楽しめば、自分も本物のポケモントレーナーとしてその世界をより楽しめるようになるというわけだ。
ポケモンGOでも同じ。ポケモントレーナーとしてバトルをすれば、もっと楽しくなる。
筆者はポケモンGOでは、黄色チームに所属した。赤、青よりもプレーヤー数が少ないのでバトルではかなり苦戦するが、だからこそ面白いことも多かった。
ポケモンGOのバトルは、本家ポケモンのように戦略を楽しむほどにはなっていないが、ポケモンが自分の周りに生息している感じは本家以上だ。現時点では、それこそがポケモンGO最大の魅力と言えるだろう。
辞めた人向けに新機能を紹介
ポケモンGOリリースの10カ月前(2015年9月)に約3分のデモムービーが公開されたのをご存じだろうか。筆者はこれを見て心を掴まれた。見ている景色の上にVRでポケモンが現れ、プレーヤーが実際にモンスターボールを投げてポケモンをゲットしていた。ポケモンの交換やプレーヤー同士のバトル、大勢でポケモンを捕まえる「レイドバトル」のような映像もあった。
20年前から楽しんでいたポケモンの世界が現実になると感じた。今見てもかなり興奮する。実際にリリースされたポケモンGOは、デモムービーとはずいぶん違ったけれども、いつか同じことができると信じてプレーしている。
現時点でもポケモンGOは本家ポケモンの一部の機能しか実装されていない。今後、ポケモンとして正統進化させるなら、本家の要素をどんどん取り込んでいくはずだ。
そこでポケモンGOをすでに辞めてしまった人のために、これまで追加された主要な機能のなかから、今後の展開にも関係するかもしれない重要なものを振り返ってみよう。
【16年8月】ポケモンの強さを判定してくれるように
バトルではポケモンの能力値によって同じ技でも威力が変わったり、技を受けた時のダメージが違ったりする。よってバトルを有利に進めるには、強いポケモンを育てたほうがよい。これを大まかに判定する機能が追加された。本家ポケモンでも、強いポケモンの育成には欠かせない機能だ。
判定機能はバトルをするプレーヤーだけでなく、ポケモンを捕獲していっぱいになったボックスを整理するときの目安にもなる。早い段階で実装されたのは、多くのプレーヤーにとってありがたかった。
【16年9月】ポケモンを相棒として連れて歩けるように
ポケモンをモンスターボールから出してつれて歩けるのは、本家ポケモンでも一部のシリーズに存在する。ポケモンGOではポケモンに応じた距離を実際に歩くことにより、進化に必要なアメを手に入れられる。ポケモンGOのゲームシステムにうまくアレンジされて実装されている。
これまではレアなポケモンをゲットできたとしても、進化に必要なアメを手に入れるためには同じ種類のポケモンをさらに捕まえて集めるしかなかった。相棒機能により、歩けば必ずアメを手に入れられるようになったのはうれしかった。
本家では特定のポケモンに進化させたり、技を覚えさせたりなどの条件になる「なつき度」と呼ばれる見えないパラメーターも、ポケモンGOでは相棒として一緒に歩くことによって上げられるようだ。正式には発表されていないものの、エーフィやブラッキーへの進化方法として実証されている。
【16年11月】毎日プレーするとボーナスがもらえるように
ポケモンGOの人気が一段落してきた時期に「その日初めて捕まえたポケモン、訪れたポケストップでXPやアイテムなどのボーナスがもらえる」という機能が実装された。7日連続するとさらに大きなボーナスが手に入る。バトルで強いポケモンを育成するには「ほしのすな」が大量に必要なため、毎日少しでも遊ぼうという気になる。
ポケモン金・銀シリーズの舞台となるジョウト地方のポケモンが追加されてからは、進化に必要なアイテムが7日目のボーナスで必ず手に入るようになった点もうれしい。
【16年12月】金銀のベイビィポケモンが一足先に解禁
ジョウト地方で発見されたトゲピーやピチューなどのベイビィポケモンがポケストップで手に入るタマゴから生まれるようになった。この仕様が追加されてしばらくはベイビィポケモンが孵化する確率があがるイベントが実施された。サンタの帽子をかぶったピカチュウも期間限定で登場した。
7種類のポケモン+サンタ帽子のピカチュウが追加されただけだったが、カントー地方(赤・緑シリーズ)の図鑑を完成させていたプレーヤーのモチベーションアップにもつながった。
特にトゲピー自体がレアな上に、進化させるとトゲチック、トゲキッスとなり、さらに新しいポケモンが図鑑に加わるため今でも人気が高い。
個人的には、捕まえられるポケモンが増えただけでゲームシステム自体が全く変わらないことに少しがっかりしていた。しかし街角でポケモンGOをプレーする人が若干戻ったように見え、次に述べるジョウト地方のポケモン解禁の布石としては手応えがあったように思う。
【17年2月】ジョウト地方のポケモン解禁
ポケモン金・銀シリーズの舞台になったジョウト地方で新たに発見された80種類以上のポケモンがポケモンGOに解禁された。前述したように、新しいポケモンが追加されたぐらいでは、大して変わらないだろうと思っていが、これだけ一気に捕まえられるようになると、それだけで十分楽しいことが分かった。
ジョウト地方のポケモンは、2つのタイプを持っているものが多く、カントー地方のポケモンにはなかった組み合わせも多い。そのためバトルの戦略も豊かになる。
このアップデートでは特定の道具を持たせる進化がポケモンGOなりの方式で実装された。本家ポケモンファンとしてはプレーヤー同士のバトルや交換機能を期待するものの、基本的な進化をポケモンGOの中で先に整備していくことが優先されていると感じた。
ポケモンに性別が導入されたことも地味だけれど、ポケモンの育成に関わる「育て屋」「預かり屋」を実装するための布石であるはずだ。丁寧に開発されていると思うので、ますますポケモンGOの進化が楽しみになってきた。
そして6月に大型アップデート!
以前から開発元より「北半球に春が訪れる頃」に導入されると予告されていた大型アップデートが17年6月、ついに解禁された。多人数で1匹の強力なポケモンに挑むレイドバトル機能が目立つところだが、個人的にはジムバトルのシステムが大きく見直された点が最もうれしい。
これまでのジムバトルは、強いポケモンを持っているプレーヤーやチーム(赤色・青色)に著しく優利で、新参プレーヤーやプレーヤー数が絶対的に少ないチーム(黄色)はつらい戦いを強いられてきた。これらが若干改善された。
新参プレーヤーがジムバトルに参加しやすくなった改善ポイントは2つ。1つは自分と同じ色のジムに6匹まで、誰でもポケモンを配置できるようになったこと(ただし同じ種類のポケモンは置けない)。以前は、自分の色のジムに空きを作るためにそのジムで「トレーニング」と呼ばれるバトルをして、配置されているポケモンに勝利しジムの「名声」を上げなければならなかった。トレーニングと名声システムは廃止された。
もう1つは新しく導入された「やる気」システム。ジムに配置したポケモンは長くジムにいると「やる気」が減ってくる。バトルに負けても減ってしまう。やる気が減るとポケモンの強さを表す「CP」も減少し倒しやすくなるのだ。CPが0になるとジムからプレーヤーの元に戻ってくる。そのため強いポケモンがジムに長期間居座ることも難しくなった。
面白いのは同じチームのプレーヤーが、ジムに既にいる他のプレーヤーのポケモンに「きのみ」を与えてやる気を回復できるようになったこと。きのみを与えたプレーヤーはほしのすなをもらえるところもうれしい。まれに、そのポケモンの飴が手に入ることもある。本家ポケモンにはない要素だが、ソーシャルゲームとしての面白さが加わった。バトルをしないプレーヤーでも自分のチームに貢献できるようになったのだ。
黄色チームの不公平感が減った
以前から、ジムにポケモンを配置すると、ポケモンGO内で課金アイテムの購入に使えるポケコインが手に入った。以前のシステムでは1匹につき10ポケコイン。上限はなかった。
アップデート後はジムに配置後の経過時間でもらえるポケコインが決まり、CPが0になって戻ってきたときに自動的に加算されるようになった。現時点では10分につき1ポケコインになっているようだ。1日の上限は50ポケコイン。この辺りは今後調整される可能性がある。
筆者のようにプレーヤー数の少ない黄色チームでは、ジムを攻略しポケモンを配置しても、続いて配置してくれるプレーヤーがなかなか現れず、すぐに奪い返されてしまうことが多い。防衛はなかなか難しいのだ。一方で、メンバー数の多いチームは防衛も有利だ。
しかし、強いポケモンをジムに配置するだけでよかった以前のシステムよりは、若干だが不公平感は減ったように感じる。
ゲームを続ける新たな動機も
ポケモンGOが「ポケモン」として面白いゲームになるために、本家ポケモンの要素を実装していくのはもちろん今後の進化の道だろう。だが、今回の大型アップデートでそれだけではないと分かった。
今回追加された協力プレーとチームへの貢献要素は、今後ポケモンGOを続ける新しいモチベーションにつながる。
前述した「ジムにいるポケモンに、同じチームのプレーヤーがきのみを与えてやる気をあげる」仕組みは協力プレーの1つだ。
チームへの貢献は、初めてチェックインしたジムでディスクを回すと手に入る「ジムバッジ」のシステムにも表現されている。ジムにいるポケモンにきのみを与えたり、ジムバトルで勝つ、レイドバトルで勝つなどすると、バッジのランクがブロンズ、シルバー、ゴールドと変化し、ディスクを回したときに貰えるアイテムの数が増える。そのジムが自分のチームのものであれば、貰えるアイテムはもう1つ追加される。
ジムバッジのランクはそのジムがどのチームに属しているかは関係ない。旅先で訪れたジムの記念にもなるだろう。このあたりはナイアンテックのゲーム「イングレス」で培われた要素が生かされているように感じる。
「協力バトル」で盛り上がった
最後にレイドバトルについて触れておこう。ジムで時々発生するレイドバトルは、強力かつレアな1匹のポケモンに対して、多人数の協力プレーで戦うバトル。
手に入りにくいポケモンをゲットできたり、レイドバトルでしか手に入らないアイテムが貰えるなど報酬も大きい。
しかしそれだけではない。筆者が楽しいと感じたのは、プレーヤーはチームの垣根を超えて同時にプレーできるところだ。普段はジムを攻防し合う敵チームとの協力戦。これは新鮮だ。
先日、筆者が経験したこと。繁華街でレイドバトルが発生すると自然にプレーヤーが集まってくるのだが、「レイドですか?」と声をかけてくれるプレーヤーがいた。「そうです」と答えて一緒にプレー。強敵を倒した後は周囲にいたプレーヤーに妙な絆を感じ、かなり盛り上がった。
もしこれが伝説ポケモンだったら? 2015年9月のポケモンGOのデモムービーでは「ミュウツー戦」が描かれていたが、それにつながる楽しさかもしれない。
辞めてしまった人は「バトル」がおすすめ
筆者がポケモンGOを1年間遊び続けてきた一番の理由は、現実の世界でポケモントレーナーになったように楽しめるからだ。自分のいる世界にポケモンが生息しているように思えるところもうれしい。欲しいポケモンになかなか出会えなくても「ポケモンを集めるって地道なんだな」と感じたり、ポケモンのタマゴをかえすために10km歩かなければならなくても「ポケモンのタマゴをかえすってこんなに大変だったのか」と思えて、それすら楽しくなる。
今回の大型アップデートでは、ポケモンの真髄でもあるバトルシステムを中心に見直され、新参プレーヤーも参加しやすくなった。何よりレイドバトルで異なるチームのプレーヤーとも協力できるところが面白く達成感もある。人が多く集まる場所でレイドバトルに参加すると、本当に協力プレーしているような状況が生まれる場合もあり、ポケモンGOならではの可能性を感じた。
ポケモンは今でも地道に捕まえなければならない。もし以前そこで辞めてしまっていたとしたら、今回のジムバトル、レイドバトルに挑戦してみてほしい。ポケモンGOを楽しむならバトルがおすすめだ。
大量のXPが獲得できるレイドバトルはプレーヤーレベルのアップにもつながるので、1日1回もらえる無料の「レイドパス」を使って参加しよう。強いポケモンが手に入り、その後のバトルで活躍させられる場合もある。ポケモンに別の技を覚えさせられる「わざマシン」と呼ばれる道具が手に入ることもある。これもその後のバトルが有利になる可能性がある。
レイドバトルは、人が多く集まる場所で戦うと参加人数が増えて勝てる確率も高い。仲間を誘って行くのもありだ。加えてポケモンのタイプ相性を覚えて、相手の弱点を突くとダメージが大きい。これは本家ポケモンと同じ戦略なので、ポケモントレーナー気分が味わえる楽しい部分だ。
ポケモンGOを1年プレーし続けてきたが、約2年前のデモムービーを見て感じた「ポケモンが現実にいると感じられる世界」に少しずつ近づいているように思う。プレーヤー同士のバトル、ポケモンの交換、育て屋(預かり屋)、ポケモンセンター(弱ったポケモンを無料で回復)など、ポケモンGOに導入してほしい機能はまだまだあるが、これからもポケモンGOを楽しくプレーしつつ、末長く見守っていくつもりだ。