中華街、肉まんの闘い–>中華奇怪人豚マンモス登場
ちょっと用事があって横浜の中華街に行った。そのついでに、ぎえもん氏が小説の中で勧めている肉まんを食べようと思ったんだが、店をチェックしていくのを忘れてしまったので、「江戸●」に行った。ちなみに彼がお勧めしているのは「酔仙酒家」であった。
「豚マン、1つください」
「はい、ぶたまんアルネ。500円ネ。ことしもヨロシクおねがいスルヨ」
「なにぃ、500円!」
江戸●のジャンボ豚マンはその名の通りジャンボだ。だから値段も高いのだが、いくらなんでも1個500円はないぞ。
「チェーンジ、クイッカマン、セットアップ! きさま、中華奇怪人豚マンモスだな、半年前は450円だったぞ」
おれはおやじの額に500円玉をグリグリ貼り付けて言った。
「よくわかたネ。ワタシ、半年前、ここの主人とすり変わて、スベテの品物を50円値上げシタアルヨ。売上はスベテNeo Sea Horseのカツトウ資金なるネ」
なんてせこい。しかし悪の秘密結社は活動が地味なのが伝統だ。客は取り付かれたようにどんどん買い物をしている。
おれはジャンボ豚マンをひとかじりした。以前より肉の味に強烈さがない。
「肉の質も落としたのか? 豚マンモス」
「それは、言いがかりアルヨ。中身は二倍、味は三倍アルヨ!!」
意味不明の言葉を叫びながら、豚マンモスはおれの方へ突進してきた。おれはさっと後ろに飛び退きヤツをかわす。路上は正月の観光客でいっぱいだ。光線技は使えない。
「スキ有り、PK」
おれは豚マンモスに上段パンチのあとすかさず上段キックをお見舞いした。豚マンモスは上ガードで技を防いだが足元がよろけている。
「豚マンモス、こっちだ」
おれは追ってくる豚マンモスを誘いながら、中華大通りから関帝通りへ抜けた。関帝廟の前にきたとき豚マンモスはおれに言った。
「逃げてバカリないで、闘うアルヨ」
ヤツは軽やかに足を運んで、アッパー気味に右パンチ、左パンチ、右パンチの連続攻撃を仕掛けてきた。おれはパンチを全てガードで防ぎ、次の手も上段ガードで防ごうとした。そこへヤツの下段回し蹴りがまともに決まった。
「ぐふっ。上段じゃないのか」
「あまいアル、最後の蹴りは上段にも下段にもできるヨ」
くそ、基本だった。そっちが基本ならこっちも基本で行くぞ。
「ダーッシュ、とりゃぁ。←P」
おれは豚マンモスの両腕を引き上体が前傾になったところへ、ヤツの脚を払うように体を下に滑り込ませた。滑り込む途中で右足をヤツの腹に押し当て、渾身の力を込めて蹴りあげる。ヤツの体は宙に浮かんだ。
「うわわわわぁぁアルヨ」
ヤツは成すすべもなく空中をもがき、落ちてくるところへあわせて、PPP7K。最後のサマーも決まった。
「ぐがががががが」
豚マンモスは苦しみ、よろめいた。体力はほとんど残っていない。ヤツは地面に倒れ込みながら言った。
「デモネ、い、今は…、にほんの正月ダカラ、「買い物1割引き券」を差し上げテルヨ…」
チュドーン。中華奇怪人豚マンモスは大爆発を起こした。
確かに買い物をした客は皆、手に割引券を持テイルネ。いかん、インチキ中国語が移ってしまった。なるほど、これで割安感を出そうとしていたのか。おばちゃんたちの心をくすぐるにくい演出だ。豚マンモス、敵ながら天晴れなヤツ。
おれは近くの「華奉行」という中華食材の店で韓国インスタントラーメンを買い、その場を後にした。
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