アップル系なのにSpotify使ってます
日経トレンディネットで「イトウアキのアップル系と呼ばれて……」という連載を毎週火曜日更新でやってます。
6/12公開の記事「久々に再会したApple Musicは冷たかった。音楽配信サービスの三角関係!?」のボツ原稿を載せます。これがどうなったかリンク先で確認してみてください。
●実は8ヶ月前にApple Musicを退会していた
筆者のアップル製品好きはハードウエアに限ったことではなく、OSやアプリなどのソフトウエアはもちろん、iCloudなどのサービスも大好きだ。だから音楽配信サービスはApple Music! と胸を張って言いたいところなのだけど、使いにくさを感じるところがあって、実は昨年の10月の月頭に退会した。
Apple Musicの使いにくさとは、趣味でやっているiPadのアプリを使ったDJで、音源にApple MusicがDRM(デジタル著作権管理)の問題で使えない点。さらに納得できないのは、自分がCDから取り込んだ曲の中にも、DJアプリの中から使えなくなってしまうものがあることだ。これは「iCloudミュージックライブラリー」という機能を使っているからということが後でわかった。
Spotifyなら音源をDJアプリから利用できることを知り、月額980円のプレミアム会員になった。Spotifyでも無料会員ではDJアプリで再生できない。Spotifyなら月額980円でDJアプリから使えるのに、同じ月額980円のApple Musicが使えないというのは残念すぎる。
そうなると2つも音楽配信サービスにお金を使っているのはもったいないと思ったので、DJに使えないApple Musicとはサヨナラすることにした。
●Spotifyはプレミアムで使ってこそ
Spotifyは無料会員でも聴き放題。ただしいくつか制限がある。曲間にたまに流れるCMは気にしなければよいのだが、スマートフォンで再生する際にアルバムの収録曲やプレイリスト内の曲をシャッフル再生しかできない。決まった順に聴く方法が提供されないのだ。ただしパソコン版、タブレット端末版のアプリではできる。曲を聴かずにスキップする回数にも制限がある。このあたりは、筆者が無料プランだったときに、使いにくいと思っていたことだ。ラジオや有線放送で音楽を聴いていると思えば、無料会員でも十分なのかなとは思う。
無料会員の制限はほかにもある。念のために紹介しておくと、無料会員ではダウンロード再生に対応していない。必ずストリーミング再生になる。外出中に音楽を聴いているとデータ通信となりその分契約している容量を消費することになる。音質は「標準音質」の約96kbpsに固定。ちょっと音質は悪いけど、BGM程度なら許せるぐらいの感じだ。
さらにプレミアム会員になってわかったのは、無料会員では再生できない曲があったのではないかと思われること。Apple MusicにあるのにSpotifyにないと思っていた曲が出てきたので、調べてみたらアプリの「再生できない曲を隠す」という設定がオンになっていた。自分の好きな曲がないと感じる人は、オフにしてみるといいかもしれない。ただしプレミアム会員にならないと再生できないのだけれど。
プレミアム会員で使ってみると、上記の問題は解消されて「Spotify、結構いいヤツじゃん」って思うようになった。
●自作プレイリストの共有が楽しい
自分の音楽ライブリーの中から、好みの曲を見つけてプレイリストを作るのも楽しいが、音楽配信サービスなら自分が作ったプレイリストを公開して、ほかの人に聴いてもらうことができる。この機能はSpotifyに限らず、Apple Musicでも提供されているのだけど、Apple Musicには無料プランが存在しないのでお金を払って会員になっている人しか聴けない。その点Spotifyなら無料会員でも聴けるので、公開したプレイリストを聴いてもらいやすいのではないだろうか。
SpotifyはApple Musicよりも、ユーザーが公開しているプレイリストの役割に重きを置いているように感じる。好きな曲や好きなアーティストで検索すると、ユーザーが作ったプレイリストが多く表示される。素人の作っているプレイリストということもあり、玉石混淆なのは仕方がない。似たようなプレイリストがあったらフォロワー数の多いプレイリストを聴いてみるといった手もある。
個人的には「TR-909」(1980年代に発売されたビンテージのドラムマシン)が使われている曲のプレイリストを作っている人もいて感激した。こういうのを見つけると、自分ももっとオリジナリティのあるプレイリストを作って公開したいと感じる。
一方、Apple Musicではミュージシャンや音楽関係者など、プロのキュレーターが作成したプレイリストを前面に押し出している。聞くところによれば、Apple Musicのキュレーターは現在配信されている曲ありきでプレイリストを作成するのではなく、配信されていない曲も必要ならば選曲するそうだ。それによって配信の交渉をする場合もあるという。
Apple Musicもユーザー同士のつながりを重視し始めているが、その点ではSpotifyの方が一歩先を進んでいるのではないだろうか。
●だけどApple Musicの方が気持ちをわかってくれた
Spotifyを使い始めてから、Apple Musicの「For You」というリコメンド機能が良かったと思うことが多い。もちろん、Spotifyもさまざまなリコメンド機能でお勧めを教えてくれるのだけど、今ひとつピンとこないからだ。
Apple Musicの「For You」には、毎週1回決まって更新される「New Music Mix」や「Chill Mix」というプレイリストがあり、これらの選曲が秀逸だった。なぜこんなに筆者の気持ちをわかってくれるのか不思議なのだが、これらを聴いているだけで一週間楽しめ、次の更新も心待ちにするぐらいだった。
Apple Musicは、自分がパソコンのiTunesに読み込んでいたCDなどの曲をiCloudにアップロードでき、その情報もリコメンドに利用しているからだと思う。筆者のiTunesライブラリーには、20年以上前から集めた曲が2万3000曲ほどある。その中に詰まったそのときどきの思い出すらリコメンドで呼び起こされたのだ。
Spotifyのリコメンドは筆者の心の琴線には触れないことが多いのだけど、自分から探しに行くと面白いものが見つかる場合がある。スポティファイとはそういう割り切ったおつきあいが良いのだろう。